無印都市の子ども

まなざしのゆくえ

映画『コクリコ坂から』の感想と考察

 

この映画がこれまでのジブリ作品と大きく異なるのは、“ファンタジーではない”という点。

宮崎吾朗「しばらくファンタジーから離れる」ジブリの今後を語る http://eiga.com/l/ix6gA 

だから作中音楽の担当は、西洋ファンタジー系の久石譲さんではなく武部聡史さんにバトンタッチしている。

これまでのジブリ作品には「飛ぶ」シーンがやたらと多いんだけれど(ナウシカのメーヴェ魔女の宅急便のキキの箒やトンボの人力飛行機ラピュタの飛行石etc) 、それらが空を飛べるのは、ファンタジーだから。ファンタジーでない『コクリコ坂から』の俊くんは真っ逆様に落ちてゆく。

 

ファンタジーでないことを象徴しているのが、海ちゃんと俊くんが自転車で坂道を下るというシーンだ。

魔女の宅急便』では、キキとトンボが人力飛行機(プロペラ付きの自転車)に二人乗りして車道を下る。なんとブレーキが付いていない。ブレーキ無しで坂道を(事故らずに)下れるのは、それがファンタジーだから。ファンタジーだから絶対に事故らない。

それに対して、『コクリコ坂から』の俊くんと海ちゃんも二人乗りで車道を下る。『コクリコ坂から』はファンタジーではないので、ブレーキはちゃんと効く。

わざわざ俊くんが言ってくれたではないか。  

大丈夫。ブレーキをちゃんとかけられる。

 

 

  1.   お掃除(飛行船のシータ、油屋の千尋、離れの部屋のキキ、動く城のソフィetc)

     お掃除をすることによって得る効果は、ジブリの主人公がその場所に愛着が湧くようになること。つまり新天地を手っ取り早く“自分の居場所”にするたった一つの方法。

    今作のカルチェラタン荘の大掃除は、その意図があからさまでしたね。

  2. 女性経営者(ホテルアドリアーノのジーナ、グーチョキパン店のおソノ、油屋の湯婆婆etc)

    コクリコ坂から』には2つの古い建物が登場する。

    経営、切り盛りが必要な“コクリコ荘”は女性のコミュニティーで、ぐちゃぐちゃの“カルチェラタン荘”が男性のコミュニティとして描かれている。


 

  • 脚本

出生の話は(俊くんが自分で言ってたけど)安いメロドラマみたいだし、その時のピアノの音が韓国のドラマのようでベタっぽく感じた。

そして気になったのは“神田カルチェラタン闘争”の名がついたクラブハウス)。 学生運動や高度経済成長の街のノスタルジーに浸るだけなら“某町の夕日”と同じではないかと思う。 だからこそ、『上を向いて歩こう』なんて選曲をしたことに関しては僕は軽く軽蔑する。

 

コクリコ坂から』は宮崎駿さんが脚本で、監督が息子吾朗さんだ。学生運動などの駿さん世代の青春物語ではなく、吾朗監督は吾朗監督の物語を描いてほしいと思った。

宮崎駿の息子として出てきたのだから、批判されるのは当然だ。

どうせどんな映画作っても批判されてしまう、そんな負け戦でも戦うことを決めた吾朗さんを僕は応援したいし、早く吾朗脚本・監督の作品が観たいと思った。

 

  •  おまけ(国際信号旗)

俊くんがコクリコ荘を訪れて、海ちゃんにこう告げる。

H、O、K、U、T、北斗だ。

映画観ているだけでは理解できないけど、海ちゃんが揚げる旗(国際信号旗)にはそれぞれ意味やアルファベットが振り分けられている。

国際信号旗 - wikipedia  

北斗さんお見送り会の時に揚げられていた旗を上から読むと、、、

f:id:shiomiLP:20120822120425p:plain H

f:id:shiomiLP:20120822120434p:plain O

f:id:shiomiLP:20120822120448p:plain K

f:id:shiomiLP:20120822120459p:plain U

f:id:shiomiLP:20120822120506p:plainT

 

北斗だ(`・ω・´)

 

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