無印都市の子ども

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新海誠『秒速5センチメートル』に登場する本を解析してみた

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新海誠監督作品の特徴の一つとして<細やかで美しい風景描写>があります。定評のある<自然風景>に劣らず<都市風景>や<日常風景>の描写にも細部まで情報が行き届いており、何気なく描かれた本棚に収められている本や登場人物が手に持つ本のタイトルは、本好きの人達としては見逃せないポイントです。

『その登場人物がどのような本を持っているか?』ということを、物語を深く読み込むための手掛かりとして描写するアニメ作家は少なくなく、その代表格が新海誠監督と細田守監督だと僕は思っています。

今回は新海誠監督の代表作『秒速5センチメートル』の作中にチラっと登場する本を解析してみました。時系列順に並んでいます。

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

秒速5センチメートル 通常版 [DVD]

 

 ※物語が1994年から始まるため、今では絶版状態で入手不可能な書籍や雑誌が多数ありました。そのため、作中では単行本であるものを、比較的手に入りやすい文庫化されたもので紹介し、雑誌は2016年5月時点での最新号を紹介しています。

 

貴樹自宅

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重なった三冊の一番上は『ダックスフントのワープ』の単行本。

ダックスフントのワープ (文春文庫)

ダックスフントのワープ (文春文庫)

 

 一番下は科学雑誌『Newton』だと思いますが、何年の10月号なのか突き止めることができませんでした。

Newton(ニュートン) 2016年 06 月号 [雑誌]

Newton(ニュートン) 2016年 06 月号 [雑誌]

 

 

 

書店

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作中の『コンパス時刻表』は1995年2月号。

種子島の鉄砲とザビエル』は単行本です。

コンパス時刻表 2016年 05 月号 [雑誌]

コンパス時刻表 2016年 05 月号 [雑誌]

 

 

 

図書室の貸し出しカード

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ナルニア国ものがたり』や『ゲド戦記』などが並びます。

2人とも海外作家の児童向けファンタジーが好きなんですね。

カスピアン王子のつのぶえ―ナルニア国ものがたり〈2〉 (岩波少年文庫)

カスピアン王子のつのぶえ―ナルニア国ものがたり〈2〉 (岩波少年文庫)

 
空とぶ庭 (世界のよみもの)

空とぶ庭 (世界のよみもの)

 
影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)

影との戦い―ゲド戦記〈1〉 (岩波少年文庫)

 

 

 

貴樹自宅 - 明里と電話

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少年ジャンプ 2016年4月11日号

少年ジャンプ 2016年4月11日号

 

作中のジャンプはおそらくこちら。

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大人明里 - 電車内

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本文を読めば夏目漱石『こころ』の最終ページであることが分かります。古典名作は様々な出版社から出ているのですが、次のページには「新潮社」という文字がありました。

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こころ (新潮文庫)

こころ (新潮文庫)

 

 

 

大人貴樹 - 電車内

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小学生の頃は同じ傾向の本を読んでいた2人ですが、転校による離別以降でしょうか、大人になった2人は読む本の趣味がズレています。明里は正統派の純文学を歩む一方で、貴樹の読書遍歴には傾向が見えず、ふらふらしています。

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

空海の風景〈上〉 (中公文庫)

 

 

 

大人貴樹 - 部屋

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Visual C++プログラマのためのCOM入門―はじめるWindowsシステムプログラミング (DeV selection)

Visual C++プログラマのためのCOM入門―はじめるWindowsシステムプログラミング (DeV selection)

 

貴樹の仕事の本ですね。他にもタイトル解析不可能なプログラミング本らしきものがいくつか部屋に散らばっていました。

 

 

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画面右下に積んである山の一番上は単行本の『夜間飛行』。大人貴樹が持っている本の中でこの一冊だけは明里も読んでいそうです。

画面左下に『日本の野鳥』という図鑑があるのですが、同タイトルの書籍が多過ぎて割り出すことができませんでした。

夜間飛行 (新潮文庫)

夜間飛行 (新潮文庫)

 

 

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TOKYO NOBODY―中野正貴写真集

TOKYO NOBODY―中野正貴写真集

 

「飛行」を連想させる二冊に加えて、誰もいない東京の街を撮影した写真集。仕事を辞める直前の貴樹の心理状態が垣間見えそうです。

 

 

女子高生明里 - プラットホーム

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カポーティ読んでるJKとか最高じゃないですか。きっと『ティファニーで朝食を』はもう読んだんでしょうね。『冷血』は好みではなかったのかもしれない。

草の竪琴 (新潮文庫)

草の竪琴 (新潮文庫)

 

 

 

大人明里 - バス停

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おそらく新海誠監督自身が村上春樹の作品が好きなんだと思います。

村上春樹の短編作品の中で最も不気味な作品である「納屋を焼く」。セリフや物がメタファーだらけで、そりゃ明里もこんな顔するわって感じの小説です。

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

螢・納屋を焼く・その他の短編 (新潮文庫)

 

 

 

 * * *

 

以上です。

『秒速5センチメール』は3つのエピソードに分かれているのですが、なんと第二話「コスモナウト」には一冊も本が出てきませんでした。

第一話と第三話の舞台が東京であるのに対して、第二話は種子島、つまり“モノが少ない田舎” が舞台。そのことを強調するため、あえて本を描かなかったのかなぁなんて思いました。

次回は新海誠監督のもう一つの代表作『言の葉の庭』の本をまとめてみます。

 

<了>

 

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