無印都市の子ども

文学と音楽とポップカルチャー系

竹内涼真に「一度逃げたら逃げ続ける人生になっちゃいますよ」なんて言わせるなよ - ソフトバンクのCMについて

f:id:shiomiLP:20180105211922p:plain

 

好きなことだけに言及し、楽しいことだけを享受して生活するほうが、精神衛生的によい。それはわかっている。

だけど、最近はあまりにもこのCMのことだけを考えてしまうので、ここで一度発散させていただきたい。

 

もともと「逃げる」という言葉には、ネガティブなニュアンスが含まれがちである。

戦わないこと、かっこ悪いこと、卑怯なこと。

しかし、時代は流れて、少しずつ変わりつつある。対峙する価値のない人、険悪な環境、腐った空気に対して、無駄に消耗するべきではない、潰されるべきではない、逃げるべきだという理解が浸透しつつある。

イジメが蔓延る教室から逃げろ。ブラックな会社から逃げろ。毒な親から逃げろ。

SMAPたちでさえ「逃げる」という言葉を肯定的に使う時代に、あるいは『逃げるは恥だが役に立つ』が今を象徴する物語になる時代に、最も旬な若手俳優に「一度逃げたら逃げ続ける人生になる」と言わせてしまうことは、これはもう罪なんじゃないかとすら思う。

 

10代の子たちは、竹内涼真のことばに耳を傾けるだろう。竹内涼真本人のことばではなく、用意された台本のことばだと理解していながらも、そのことばは彼ら彼女らの心に深く宿るだろう。

そして彼ら彼女らが生活の中で、たとえば「どうしてもつらくて逃げ出したい」となった局面で、そのことばが悪い方向に作用してしまうーーそんな可能性は容易に想像できてしまえる。

 

* * *

 

少し前から、ソフトバンクのCMには不信感を抱いていた。

上戸彩北大路欣也などの長年続いた〈家族シリーズ〉に突然終了が宣言され、竹内涼真杉咲花などの〈新しい家族〉のメンバーがひょっこりと現れる。唐突な解雇通知のような冷たい対応に「なんだかなぁ…」と思っていたものの、結局上戸彩たちは残り、新しい家族は追加メンバー?のような感じで合流することで落ち着いたように見えた。
そして、家族終了宣言以降、姿を消していたダンテ・カーヴァーに対して、新しいメンバーである竹内涼真がこう言うのだ。
〈一度逃げたら逃げ続ける人生になっちゃいますよ〉


いや、あんな理不尽に「家族」を解散させるような職場、逃げたほうがいいんじゃないか?

もう信頼関係が消滅していると言ってもおかしくないだろう。唐突の終了が、ガチであったのか演出であったのかはここでは関係ない。ソフトバンクがああいう冷たい会社なんだと知らしめるための広告だったのなら納得するけど、当然ながらそんなわけもない。

愛着があったかどうかは別として、それなりに知っていた〈家族シリーズ〉に、あんな思いやりのない解雇通知が下されて、ぼくは正直に言って悲しい気持ちになった。

あるいは引いてしまったという表現のほうが適切かもしれない。上からの権力で家族をぶった斬る。みんなSMAP解散の経緯を見てきたのだから、それを面白がれる人はたぶん少ないはずだ。

 

ダンテ・カーヴァーは逃げて然るべき環境にあったと思う。

一度逃げたくらいで逃げ続ける人生にはならない。そんな脅しには屈せず「これはあかんわ」と思った場所からは逃げるべきだと思う。

竹内涼真に「一度逃げると逃げ続ける人生になっちゃいますよ」なんて、そんなことは言わせないでほしい。

 

<了>

 

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)

「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)

 
逃げるは恥だが役に立つ Blu-ray BOX

逃げるは恥だが役に立つ Blu-ray BOX