無印都市の子ども

ポップカルチャーの極北

歌は世につれ世は歌につれ 紅白2019

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「歌は世につれ世は歌につれ」と言い始めたのは誰であろうか。2020年になっても、その言葉は真理であると実感する。

世の流れの変化がその時代の流行歌の傾向にあらわれて、そして歌が世の風向きを我々の無意識のうちに変えてゆく。それはマーケティングとかターゲティングなんて話ではない。もっと深層に眠っているわたしたちの"祈り"が、そうさせているのだと思う。

 

NHK紅白歌合戦のコンセプトである「男性vs女性」という構図に対して、時代にそぐわないのではないか?という声がアーティストからもぽつぽつと出始めたのが平成の終わりであった、と認識している。

星野源が「おげんさん」という別のキャラクターを持ち出して白組でも紅組でもない立ち位置から「これからの紅白は紅組も白組も性別関係なく混合チームでいけばいいと思う」と発言したのが2018年。2019年はその象徴としてピンク色のダウンジャケットを着用して歌唱した。椎名林檎は今年こそ紅組で出場したが、ここ数年は男性歌手とのコラボで特別枠のようなポジショニングをとってきた。

それらは世が歌に影響を及ぼした結果であるといえるし、そしてまた歌が世を変えてゆく前兆であるともいえる。

 

2019年の氷川きよしのパフォーマンスについてツイッターに投稿すると、思いがけない数のRTとfavが届いた。

ここまで大きなバズははじめてだったので、RTしてくれた人たちのアイコンとbioを観察してみた。いわゆる音楽ファンからアニメオタク、インフルエンサーと呼ばれる方、プリクラアイコンのJK、自称ネトウヨ、自称フェミニスト、自称反原発、 ただクソリプを投げているだけの人などなど、多種多様なひとたちからレスをもらった。(「自称」とつけたのは、ぼくが勝手にカテコライズしたわけではなく、彼ら彼女らのbioにそう記してあったという意味です)

そのなかのひとつに、以下のようなコメントが引用RTで飛んできた。

ジェンダー論だから一部の人達にはカッコつくけど会社とかお客様先でやったら引かれて終わりやん」(原文ママ

おそらく彼の考えとしては「ジェンダーの問題は、おれたちの住む社会の外部に存在する」と認識しているんだろう。 もちろん現実はそんなわけもなく、きっと彼の所属する会社や取引先にも潜在する問題だと思うんだけど、たぶん彼には見えないだろうなと思う。もっと正確な言葉でいえば、彼のいる会社では彼に見えないようにやっていくのが今のところ正解、と考えるだろうなと思う。

だから「会社とかお客様先でやったら引かれて終わり」というのは、ある側面ではたいへん正しい。引かれていろんなことが一瞬にして終わってしまう、という光景は想像に難くない。

だけど、だからこそ氷川きよしのパフォーマンスには意味があったとぼくは思う。彼の歌が、世に示した彼の姿勢が、当事者たちの意識やまわりに蔓延る空気、ひいては世を変えてゆく。少しずつ、段階的に、彼のいる会社までも届く。

歌は世につれ世は歌につれ。

きっとNHKは現状の「紅白歌合戦」を維持していくだろう。その枠組みで、世の風向きに敏感なアーティストから順に、ジェンダーに捉われないパフォーマンスを披露していくようになり、紅白という組分けが徐々に形骸化してゆくんじゃないかとぼくは予測している。そしてそのときには、世の風向きもまた今とはちがっているのだろう。

だけど意思は言葉を変え

言葉は都市を変えていく

躍動する流動体 数学的 美的に炸裂する蜃気楼

彗星のように昇り 起きている君の部屋までも届く

『流動体について』 小沢健二

<了> 

大丈夫/最上の船頭【Fタイプ】

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流動体について

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