幼少期にどのような作品に触れるかによって、その人の好みや傾向が半分くらいは決定される気がする。
半分ノイローゼになってしまうくらいに「れでぃごー」な世界になってしまったわけですが、今を生きる子ども(特に幼女!)が、2014年7月16日以降この作品をDVD/Blu-rayで何度も何度も再生し続けるのは割と面白いことだなぁと感じたので少し感想を書きます。
ディズニーが苦手でも観られるよ「21世紀ディズニー映画」
僕はこれまでディズニー映画に対して苦手意識を持っていたのですが(幼少期にディズニーを観たか、ジブリを観たかでその人の好みが割と決定する気がする)、『アナと雪の女王』は割とすんなりと観ることができました。
何故すんなりと観ることができたのかを考えると、やはりこの作品はこれまでのディズニー映画とは異なる価値観であることを表現している点がとても多いことが理由だと思うのです。
たとえば。
これまでずっと乙女の理想(あるいは妄想)とも言えるような“THE 白馬の王子”を描いてきたディズニー映画が、プリンセス・アナにとっての“運命の人”を「彼は完璧じゃない」と表現し華麗に歌い上げる。これはなかなかの革命だと僕は思うのです。
アナもまた完璧でない。会ったその日に婚約しちゃう軽さ、結婚式の料理とかアイスのことしか考えていないあの“ゆとり”感。それが嫌だという人もいるだろうけれど、絵に描いたようなお姫様と王子様の物語に変なアレルギーを持っている人でも観ることができる。
たとえば。
幼少期に悪い奴に呪いを掛けられた可愛そうな女王はそれ以来ずっと引きこもっていたが、ある日現れたイケメン王子様が太陽の下へ連れ出してくれる。2人の愛は悪をやっつけるし、氷だって溶かしちゃってまじはっぴー。
というのがいわゆるディズニーですよね。
しかし、もう、そんな男の子と女の子の物語は力を持たないことを、21世紀のディズニーは知っている。
お前にエルサを救えるか!
さて、問題はエルサですよ。
一応この映画の表向きの主人公(プリンセス)はもちろんアナです。2人の若い男性が登場し、その2つのボーイミーツガール機会はどちらもアナと取ってしまったし、なんと言ってもこの映画は『“アナ”と雪の女王』ですよ。
しかしこの映画が抱える深みはエルサがすべて背負い込んでいる。
触れるものすべてを凍らせてしまう力は、きっと才能でも能力でもなくて、生まれつきの、コミュニケーションに苦手意識を持ってしまう障害でしかない。
そういうものはたぶん誰でも持っていて、滑舌が悪いから、吃音症だから口数が少なくなったり、そういうものだと思うのですよ。
だからこそ僕が気持ち寄り添ってしまうのはアナではなくエルサで、変な書き方だけど、もっとちゃんとエルサを救ってあげてほしかった。
映画製作当初は、エルサは悪役だったそうなのです。しかし「れでぃごー」があまりにも良い曲だったのでエルサをいい奴という設定に変更してしまったらしいのです。
でもその変更によって物語は崩れ、綺麗に収まっていない。
エルサが最後に「愛の力」で氷を解かすのは、エルサが愛を忘れた悪役という当初の物語設定だからこそ成り立つエンディングであって……、
実際のエルサは一度だって愛を忘れてはいないではないか!!!!
むしろエルサはアナや国を愛するが故に部屋に引きこもり、国から逃れたわけじゃん!
1人でぇーいたいのよぉーってそんなわけないじゃん!
1人でなんかいなくないしアナが可愛くて仕方なかったじゃん!
だからこそちゃんと救ってあげたかった!
なんだったら男の子に救われる、凍らせてしまう力の丸ごと肯定してくれる王子様がエルサの前に現れても良かったんじゃないか!
くそ!エルサ!エルs
れでぃごー
少し熱くなってしまいました。
さて、楽曲について書きます。なんといっても『Let it go』。
映画プロモーション役を一手に引き受けているMay J.さんですが、映画を観る前に彼女の声で聴いた印象は「自己啓発的」というか、いかにもJ-POPアーティストが歌いそうな前向きソング☆でした。
でも作中で聴く松たか子さんverだと印象がまったく異なる。
全然前向きではないし、むしろ社会から迫害されて、城の自室よりももっと深く冷たいところへ引きこもる歌。
ある意味、エルサが人であることを諦めた曲。
だから、なんでも言うけどさ、エルサをちゃんと救ってあげてよ。。。
<了>
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※追記 - この映画の唯一気に食わない存在はオラフだわ。あざとすぎる。