無印都市の子ども

まなざしのゆくえ

小沢健二とSEKAI NO OWARIが一緒にある世界へ

 

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小沢健二SEKAI NO OWARIの『フクロウの声が聞こえる』がリリースされ、Mステに出演しました。

「賛否両論を呼んだこの2組の組み合わせについて」と「2組に共通する地上波テレビとの付き合い方について」、今回は一人対談形式で語ります。

おいおいオザケン、なんでコラボ相手がセカオワなんだよ……なんて思っちゃった人に向けて書いたつもりです。

 

* * *

 

小沢健二SEKAI NO OWARIが一緒にある世界

司会者「先日、小沢健二SEKAI NO OWARIがコラボした『フクロウの声が聞こえる』が発売になりました。」

潮見「魔法的ツアーで披露された新曲の中では『飛行する君と僕について』『フクロウの声が聞こえる』が特に印象に残っていたので、今回のリリースはとても嬉しいです。魔法的ツアー全体を通して、米国作家のリチャード・ブローディガンの『西瓜糖の日々』を彷彿させるなーと思ったのは、『フクロウの声が聞こえる』の影響がいちばん大きかったんだと今回気づきました。」

司会者「SEKAI NO OWARIとのコラボについてはいかがでしょうか?」

潮見「その2組の組み合わせだと発表されただけでもう最高!!!と思いましたが、楽曲を聴いてさらに最高だなと思いました。世代は違えど、歌い方などがよく似ているともともと指摘されていたふたりだったので、その声々がサビで合わさったときは、なんというか、2017年!って感じがしましたね。」
司会者「2017年って感じとは?」
潮見「想像だにしないことが起こる嬉しさって感じ。」

司会者「SEKAI NO OWARI小沢健二のコラボなんて、想像を超えていますよね。」

 

司会者「世間では、コラボ相手がSEKAI NO OWARIであることが発表されて、小沢健二ファンからは落胆の声が多かれ少なかれありました。」
潮見「まず前提として、100%全員に賛成されるようなコラボはないと思います」
司会者「とはいえセカオワかよ。。。っていう。」

潮見「SEKAI NO OWARIに対する偏見についてはあとで喋るとして、小沢健二と同時代に活躍したアーティストがコラボすれば、その摩擦も少なかったとは思います。でもそれでいいのか?っていう。」
司会者「だめですか?」

潮見「だめじゃないですけど。うーん、例えば、90年代における自身の活躍を参照しながら再活動を始めたバンドはここ数年だけでも多くいましたけど、小沢健二のそれは違いますよね。」
司会者「まったく新しい活躍ですね。」

潮見「まったくかは分かりませんが、新曲をたくさん抱えて帰ってきたわけですからね。」

司会者「ただ懐古的なわけではないと。」

潮見「それに、ある程度遠い立ち位置にいる人と組まないとコラボって意味なくないですか。酢豚にパイナップルを投げ込むからこそコラボであって、オレンジとパイナップルを同じ皿に盛っても、それはコラボじゃないですよね。」

司会者「『フクロウの声が聞こえる』の歌詞に通じるところがあるかもしれませんね。」

潮見「Twitterでみんな言ってますけど「小沢健二SEKAI NO OWARIが一緒にある世界」なわけですよ。時空のねじれを感じますよね、一体今は何年なんだよ?!みたいな。」
司会者「2017年!って感じがするってさっきあんた言ってなかったか…?」
潮見「まぁ、要は同じことです。」

 

 

アーティストと地上波テレビ

司会者「SEKAI NO OWARIについては、潮見さんはとても評価してしますね。」
潮見「評価しているって言うと上から目線すぎてあれですけど、彼らがどこへ向けて音楽や言葉を発しているかと言うと、明らかに自分よりも下の世代だと思うんですね。」
司会者「今の中学生や高校生ですね。大学生もか。」
潮見「あとで言いますがその枠の中に小学生まで入ってくるところがSEKAI NO OWARIのすごいところです。」
司会者「潮見さんの世代(26歳)には向けられていないと。」
潮見「はい。でも、たとえ自分に向けられていないものであっても、その役を買って出ていることはとてもすごいことだというのは伝わっていますし、それを否定する大人にはなりたくない。」

司会者「その役を買って出ている、というのは?」

潮見「もともと、本当に人気なバンドって地上波テレビに出演しなかったじゃないですか。誰からの流れなのか知りませんが。吉田拓郎?」
司会者「そうですね。吉田拓郎からの流れを今も引きずっているとは思えませんが。」
潮見「そんな流れに危機感を覚えて、風穴を開けるように突破していったのがサカナクションだと思うんです。」
司会者「サカナクションは音楽的にもプロモーション的にも本来なら地上波テレビに出ないほうがバンドの雰囲気に合っているように思えますね。」
潮見「サカナクションは「テレビに出るのはかっこ悪い」みたいな風潮の中で、「いや、今の時代むしろテレビに出るほうがカッコいいぜ?」という流れに持っていったんですよ、すごいぜ山口一郎!」
司会者「それ以降、地上波テレビに出ていなかったバンドがたくさん出演しましたね。
BUMP OF CHICKENRADWIMPSDragonAshSEKAI NO OWARIクリープハイプ、アレキサンドロス、キュウソネコカミやキートークなども、サカナクションの流れがなければテレビに出ない方向性を取っていた可能性もありますよね。」

 

 

お茶の間のポップアイコンとしての小沢健二SEKAI NO OWARI

潮見「2年前に地上波テレビ初登場したハイスタンダードのKen Yokoyamaが、自身のMステ出演について「もっと若い子にバンドに興味を持ってもらいたい」とコメントしていたんですね。」

司会者「これまで地上波で演奏していなかった彼の、その決意を受けた上で聴く演奏はとても沁みるものがありましたね。」

潮見「くそかっこよかったですね。そのKen Yokoyamaの決意が示すものと同じ方向に向かって、今いちばん活動していて今いちばん結果出しているのは、どう考えてもSEKAI NO OWARIだと思うんですよ。」
司会者「つまり、SEKAI NO OWARIの活動が、小学生中学生が音楽に興味を持つきっかけとなる存在になっていると。」
潮見「実際、ライブは小学生めっちゃ多いですからね。」

司会者「みんな口ずさめるんですよね、RPGとか。」

潮見「しかもSEKAI NO OWARIって『ちゃお』でマンガ化されているんですよ。」

司会者「ロックバンドなのに。」
潮見「今の小学生、普通に過ごしていればAKB系列のアイドルやジャニーズアイドル、あとはエグザイルグループなどが目に入ってくるメディア環境の中で、バンドの中で最もポップアイコンとして矢面に立っているんですよSEKAI NO OWARIは。」

司会者「小さい頃に観ていた、というのは強いですよね。」
潮見「そうですよね、例えば1990年生まれのぼくがポンキッキーズで彼を観ていたように。」

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司会者「なるほど、ポンキッキーズ小沢健二がそうであったように。」

潮見「テレビにばんばん出ると楽曲よりもイメージが先行してしまうからこそ、いろいろな逆風や偏見を受けてしまうわけですけど、それを厭わずにしっかりと子どもから大人まで、生活の中に届く音楽と言葉を発信し続けている。」

司会者「確かに、趣味の細分化が指摘されている2017年にはなかなかできるものではないかもしれませんね。」

潮見「小沢健二の時代であっても簡単ではなかったと思いますよ。今回のMステは、そんな2組が一緒に地上波テレビで歌うから意味があったのだと思います。」
司会者「いい感じに締まりましたね。」
潮見「いい感じに書けた。でも実はSEKAI NO OWARIについてはもっと語りたいんです。彼らのクリエイションは、ロキノン期、ファンタジー期、そしてドラゲナイ以降に分けることができて、多くの人はファンタジー期の印象で止まっているけど、ドラゲナイ以降の楽曲のクオリティすげぇぞと。」
司会者「それはまた次回でお願いします。」

潮見「はてなブログの下書きにストックしているので、機会があれば。」
司会者「ありがとうございました。」
潮見「ありがとうございました。」

<了>

 

フクロウの声が聞こえる(完全生産限定盤)

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西瓜糖の日々 (河出文庫)

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相反するふたつが一緒にある世界へ!と叫ぶふたりの姿、最高にエモいですね。いい時代だー。

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