数あるジブリ映画の中でも取り分け人気の高い『魔女の宅急便』、その原作小説が文庫化されました。
装丁がめちゃめちゃ素敵。
- 作者: 角野栄子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2013/04/25
- メディア: 文庫
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ジブリ映画版と原作の違い
人物や設定の詳細は多少異なりますが、冒頭から“魔女の宅急便”屋さんと開くまでの展開はジブリ映画版とほぼ同じで、キキが引き受けるお仕事の内容が異なります。
原作小説では、壊れてしまった鐘を慣らしたり、恋する女の子に代わって恋文とプレゼントを男の子に届けたり、船長さんに腹巻を届けたり……と、児童文学らしいエピソードが続きます。
言うなれば、ジブリ映画版の未公開シーンを観ているような内容です。
黒猫のぬいぐるみとカゴを届けるというジブリ映画版であったエピソードもあります。原作小説を知ることで、ジブリ映画がこのエピソードをどれだけ上手に膨らませているかがよく分かる。宮崎駿の想像力というか、物語をどう動かせば人物が活きるかを知っている感じ。しかも展開がとても自然で、そしてなにより面白い。
黒猫ジジが喋れなくなった理由
原作小説にはなかったエピソードなのですが、黒猫のジジが突然、人間の言葉が喋れなくなってしまうエピソードがジブリ映画版にあります。
あくまで僕の勝手な想像なのですが、あれって最初からジジは言葉なんて喋れなかったんだと思うんです。
幼い女の子がよく行う遊びに、生き物やぬいぐるみに話し掛けるという「1人遊び」がありますよね。例えば“ハム太郎に語りかけるロコちゃん”とか“クマと会話する宇多田ヒカル”がそうであるように。(宇多田は女の子って歳でもないけど(笑))
僕はキキと黒猫ジジの会話もそれだと思っているのです。
つまり、黒猫ジジは始めから喋る事なんてできなくて、すべてキキの自問自答、一人二役の脳内会話でしかない。ジブリ映画版でキキが物語の後半にぶち当たった問題は、自立することや働くこと、そして恋です。そんな“大人になるための試練”を前にして、キキは子ども遊び(ジジとの脳内会話)を捨てなければいけなかった。だから黒猫ジジの声が聴こえなくなったんじゃないかと思うのです。そして、キキの魔法が戻った後もきっとジジは喋れないままです。だってジジが喋れないことが、キキが大人になった証しなのだから。
実写版『魔女の宅急便』について
そもそも何故このタイミングで『魔女の宅急便』が文庫化されたかと言うと、本作が実写化されることが決定したからです。主演のキキ役は小芝風花さんという新人女優。
今回の『魔女の宅急便』に限ったことではなく、人気のマンガや小説が実写化されるという話が持ち上がると、そのファンから「イメージが壊れる」ととやかく言う人が現れます。(『僕は友達が少ない』という人気ライトノベルの実写映画化については、ファンが制作中止を求める署名活動を起こしたなんて話も聞きました。「原作(あるいは私の知っているそれ)しか認めない」という態度が作品に対する愛だと勘違いしているのでしょうか。)
まだ観てもいない実写化を「嫌だ嫌だ」とわめくのは正直言って幼稚だと僕は思うので、まぁ期待せずにゆるい気持ちで待っておけばいいんじゃないかなぁと思います。
実写化に対する僕の心配は、キキの飛行と黒猫ジジをどう表現するかで、それらがお粗末な感じになっていない限り、僕は観てみたいです。というわけで小芝風花さんがんばれ。
3人の魔女による補完計画
原作を読んで思ったのは、原作小説とジブリ映画版と実写映画版のどれが良いか、という話ではなさそうだということです。
ジブリ映画版は原作のエピソードを上手に膨らませているし、原作はジブリ映画版にはないキキの少し意地汚い人間らしい語りとジブリが描かなかった未来の物語があって、そしてきっと実写映画版もそれらとは異なる顔を見せてくれるのだと思います。
つまり、3つで1つの物語(あるいは3人で1人の少女)を補完し合う形態になっているわけです。
そして何より、『魔女の宅急便』はいつだって、新しいことを肯定する少女の物語です。実写化楽しみですね。
<了>
※追記2013年5月31日:実写版『魔女の宅急便』キキのビジュアル公開!
さぁどうなることやら。。。
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