「第63回NHK紅白歌合戦」の出場歌手が決定しました。
http://www9.nhk.or.jp/kouhaku/artists/index.html
僕はこの中で「いきものがかり」に注目しています。
「紅白はオワコン」って人もいると思いますが、紅白衰退についても簡単に書いてみますので、よかったら読んでください。
音楽の多様化細分化
まず、これは音楽に限ったことではありませんが、今は消費の趣味嗜好が多様化分散化しています。世代が違えば聞く音楽が異なるのは当然、同世代であっても10人いれば10人とも聞く音楽が違い、 そのコミュニティ文化圏内であればとても有名人なのに知らない人はまったく知らない、という状況です。
少し前では若い女の子はみんな浜崎あゆみでした。みんなが口をそろえて浜崎浜崎と言うので、違う世代の人間でも名前くらいは知っていたはずです。
ですが今は若い子に「今何流行ってるの?」と聞いても、「AKB48」とか「西野カナ、加藤ミリヤ」とか「V系」とか「K-POP」とか「ボカロ」とか「アニソン」とか・・・、返ってくる答えがバラバラすぎて「これだけ抑えておけばOK」というものはありません(もちろん昔からV系やアニソンは存在しますが、あくまでそれらはサブであり、浜崎のようなメインとなるアーティストがいつの時代にもいたはずです)。
「若者文化」と一つに括れません。(インターネット普及以降に生まれたデジタルネイティブと呼ばれる世代は、YoutubeやiTunesのようなアーカイブが豊富なので、過去のアーティストを今熱心に聴いているという子も珍しくありません。電気グルーヴを聴く女子中学生がいますし、僕も平成生まれなのですが60年代後半から70年代のフォークが好きです。iPodにいっぱい入ってます)。
※余談ですが、今のJ-POPはJ-POPと一つに括れないけれど、K-POPはK-POPと一つに括れてしまえるんですよね。
カルト的なアーティストが大衆性を持ったように錯覚させる紅白歌合戦
そんな状況ですから、「みんなで聴ける」という大衆性がコンセプトであるNHK紅白歌合戦が衰退(オワコン化)していくのは当然です。
そうなると、紅白歌合戦の出場歌手の顔ぶれには、いろんな人に広く知れ渡ったアーティスト(そんなアーティストはもう存在しえない)ではなく、一部のコミュニティーでカルト的人気を博したアーティストが台頭してくるのです。故に「知らない顔」ばかりで最近の紅白はつまらないと感じる人が増えているのだと思われます。
特に今年の顔ぶれはそんな傾向が強いです。
きゃりーぱみゅぱみゅ、ももくろクローバーZ、SKE48、ゴールデンボンバー、三代目 J Soul Brothers。初出場ではありませんが水樹奈々、AKB48も売上が大きすぎて錯覚してしまいそうになるけど「一部でカルト的」であり「国民的」ではないと思います。
それぞれのコミュニティーで人気を付けてきたアーティストが並んでます。
それらのファンの方々はアーティストの紅白出場を喜ぶでしょう。だって自分たちのコミュニティで比較的小さく活動していたものが、紅白に出ることで、まるで大衆性を得たように錯覚するから。
※ちなみに、趣味嗜好が細分化されていく中で、「全世代で歌える歌」を最後に提供できたのは、おそろくSMAPの『世界にひとつだけの花』だと思います。これを21世紀にリリースできたSMAPの功績はデカいです。
いきものがかり
多様化細分化されていく状況下では、たとえアンチが生まれようとも派手で偏ったもののほうがカルト性は高まるのは当然です。AKB48やももいろクローバー、ゴールデンボンバーはそんな感じです。
そんな中で王道J-POPと呼ばれるような歌を歌うことは、一瞥しただけでは特徴のない無個性なものですから一番危険な道です。なのにそれをやり切って、実際にセールスを上げているのが「いきものがかり」です。
大衆の王道を歩けるいきものがかり
いきものがかりのデビュー曲『SAKURA』は、野球世界一決定戦「ワールドベースボールクラシック」(以下、WBC)の決勝、準決勝の放送中に大量オンエアされて人気になった曲です。
WBC決勝は関東43.4%、瞬間最高視聴率56.0%。準決勝は関東36.2%、瞬間最高視聴率50.3%。そんな大衆性の高いかなりレア瞬間に大量オンエアされるというラッキーをデビュー時で得ているのですが、ここから先もすごいです。
2009年度NHK全国学校音楽コンクール中学生の部課題曲。
2010年に放送された全ドラマの中で2番目に高い23.6%という視聴率を叩きだした NHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』の主題歌。
「第83回選抜高等学校野球大会」入場行進曲。
NHKロンドンオリンピック・パラリンピック放送テーマソング。
ベストアルバムは100万枚を売り上げました。
週間1位(通算3週)、2010年11月度月間1位、2010年12月度月間4位、2011年1月度月間1位、2010年度年間2位、2011年度年間10位。
音楽の好みが細分化された現状で、これだけ王道を歩ける彼らは、たぶん唯一の、大衆的アーティストです。
言ってしまえば唯一の紅白的アーティストです。
カルト的人気を得ることで紅白出場を果たした他のアーティストとは紅白に出ることの意味が大きく異なります。大衆性を失った紅白歌合戦において、大衆的に売れて大衆的に出場を果たす彼らは、王道であり異端です。
おそらく今年のトリもSMAPで、次のトリは嵐だと思います(ジャニーズもカルト的なんだけど大衆まで持ち上げる力がすごい。でもそれも最近は弱ってきていて、Hey! Say! JUMPや今年の紅白にも出るNYCが嵐ほどまで大衆性を得るとは思えません)。
つまり、何が言いたいかというと、近い将来、遅かれ早かれ、紅白歌合戦のトリはいきものがかりだってことですよ。
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