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無印都市の子ども @shiomiLP

平成ポップカルチャー と インターネット自由研究

『週刊少年ジャンプ』から見える“ヒーロー”の変化

コミック

 

言葉の意味や価値は変化する

言葉はどのように流通するかによって意味や価値が変化していく。
例えば「オタク」という言葉は、かつては蔑称だったにも関わらず今ではオタクであることを自称する若い女の子が増え、一種のステータスへと言葉の価値が上書きされた。


最近だと「壁ドン」もそう。

「集合住宅などで隣の部屋が騒がしい時に壁をドンと殴る行為」から「男性が女性を壁際に追い詰めて手を壁にドンと突く行為」へと変化した。(壁ドン - Wikipedia - 参照)

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そして今なんとなく面白い変化をしているなぁと思ったのが「ヒーロー」という言葉。
一言で言うと、「ヒーロー」という言葉が“称号”から“職種”へと変化している
今回はジャンプ漫画を手掛かりに、そんな言葉の変化について書いていく。
取り扱うジャンプ漫画は2作、『僕のヒーローアカデミア』と『ワンパンマン』です。
ご存じでしょうか。まぁ別に知らなくても大丈夫です。

 


ヒーローは称号から職種へ。【僕のヒーローアカデミア】

「ヒーロー」という言葉は“称号”であった。
人助けをすることによって、悪と対峙することによって、「あいつはぼくたちのヒーローだ!」とヒーロー的存在に祭り上げられる。つまり彼がヒーローであるかどうかは大衆やメディアが決めるものだった。スーパーマンスパイダーマンをはじめとするアメコミヒーローも、国産ヒーローであるアンパンマンもそうだ。

 

そんなヒーロー物語は影をひそめ、近年は職業としての「ヒーロー」が登場し始めた。
週刊少年ジャンプの新世代の旗手として今最も勢いのあるマンガ、『僕のヒーローアカデミア』。

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超常能力“個性”を持って生まれるのが当たり前の世界。個性を悪用する犯罪者「敵(ヴィラン)」を取り締まる存在「ヒーロー」は人々のあこがれの存在となっていた。少年緑谷 出久(みどりや いずく)も幼い頃からヒーローに憧れ、ヒーローになるために難関高校・雄英進学を目指していたが、先天的“無個性”であり合格は絶望的と周囲からバカにされ続けていた。高校受験を控えたある日、憧れのヒーローであるオールマイトと偶然出会う。


ヒーローアカデミアという名前の通り、ヒーローを育成する教育機関があり、主人公は名門高校のヒーロー科に在籍している。
ヒーロー科で学んだ学生たち将来社会に進出し、世の中を破壊し人を襲う敵を退治する。ヒーローたちはまるでタレントのように人気付けされ、社会の平和を守ることを職業としている。
称号としてのヒーローは存在しない。他人から与えられる称号から自称する職種へと変化した。

 

 

ヒーローは称号から職種へ【ワンパンマン】

『僕のヒーローアカデミア』だけがこの「ヒーロー職業化システム」を採用しているのなら気にならないのだが、今秋アニメ化が決定しているWeb発の『ワンパンマン』もヒーローを職業として捉えている。

この同時代性が今回の記事の面白さだ。

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就職活動に行き詰る青年・サイタマは、ある日街で暴れていた怪人から顎の割れた少年を救う。その際、「ヒーローになりたい」という幼き頃の夢を思い出し、就活を辞めてヒーローになる事を決意。3年間の懸命なトレーニングの末、彼はどんな敵でも一撃で倒せる最強の力を手に入れるが、その代償として頭髪全てを失う。しかし一撃で決着が付くということから戦いに対する緊張感などを失い、ヒーローになった現在でも無気力な日々を送っていた。

 

主人公は長らく趣味でヒーロー活動を行ていたが社会で認知されず、のちに自分以外のヒーローは皆ヒーロー協会に入会していることを知り、プロヒーローとなる。趣味は職業となる。『僕のヒーローアカデミア』と同じく、ヒーローたちはランク付けされる。

『ワンパンマン』にはこんなセリフがある。

『人気のないヒーロー』はフリーターみたいなもんだろう?

 

この記事書いていてなんか分かってきた。

この二作が示す「ヒーロー」は、プロ野球選手などの「スポーツ選手」という職業に近い。
“称号”としてのヒーロー、“趣味”としてのヒーローでは成り立たない。何が成り立たないか。物語が成り立たない。世界が成り立たない。面白さが成り立たない。
21世紀日本のヒーローを成立させるには、今のところ職業にしてしまうのが最も有効な手段であることをジャンプが示している。

 


僕はヒーロー、私はアイドル

実はこの記事、「ヒーロー」を「アイドル」に置き換えても成り立つ。「アイドル」という言葉もまた、“称号”から“職種”へと変化してきた。
しかし今ではもう「アイドル」は職種ですらなく、女の子は誰でも自称すれば「アイドル」になれるようになった。
「一般女性のアイドル化」と僕が勝手に呼んでいる。


例えばTwitterで「学校 終わった」で検索してみてほしい。

一体どれがアイドルで、どれが一般人女子高生なのか見分けがつかない。
自覚的か無自覚かは問わず、女の子はアイドル的な活動を日々行い世界に向けて発信している。それは危ない側面もあるが、新しい時代のわくわく感もする。

 

今の若者は女性が元気で男性が弱いとよく言われている。僕自身の実感もそれに近い。
男の子が生き方をなかなか見つけられない世界で、「ヒーロー」という言葉が女の子にとっての「アイドル」のように、なにか男の子の生き方を示してくれる光になったりしないかなぁとほんの少し期待したりしている。

<了>

ワンパンマン 01 (ジャンプコミックス)

ワンパンマン 01 (ジャンプコミックス)

 
僕のヒーローアカデミア 1 (ジャンプコミックス)

僕のヒーローアカデミア 1 (ジャンプコミックス)

 

 ↑ヒーローアカデミアの作者・堀越耕平は絵が上手くてPOPで王道的なジャンプ漫画描ける人で、僕だけでなくいろんな人が期待している注目作なのです。

「漫画はあんまり読まないけど『ONE PIECE』だけは買っているわー」みたいな大人たちにもおすすめ。

 

※記事のタイトルに『週刊少年ジャンプから見える~』とありますが、ワンパンマンは『週刊少年ジャンプ』ではありません。

 
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