無印都市の子ども

まなざしのゆくえ

欅坂46・二人セゾンを語りたい所存

 

11月30日に発売される欅坂463ndシングル『二人セゾン』のMVが公開されました。

今回は特に映像が素晴らしかったので、そこを中心に今回も<一人対談形式>で語り、後半では例のナチス衣装問題についてちょっとだけ喋りたい所存です。

 

* * *

 

司会者「今回も一人対談形式です。よろしくお願いします」

潮見「よろしくお願いします」

司会者「デビュー曲『サイレントマジョリティー』、2ndの夏曲『世界には愛しかない』に続いて、3枚目『二人セゾン』は秋らしい衣装と楽曲になりましたね」

潮見「今回もラジオ音源を先にYoutubeで聴いていたんですけど、そのときの印象はけっこう微妙だったんですよね」

司会者「微妙でしたか」

潮見「他のアイドルに比べて欅坂46の楽曲の完成度が群を抜いているのは承知の上ですし、ゆえに僕の中で限りなく期待値が高まってしまっているのも自認しています」

司会者「いい曲ではあるけど、期待しすぎてしまった、ということですか」

潮見「『世界には愛しかない』も最初はラジオ音源で聴いたのですが、いきなり“語り”から入り、そのあとの<ただじっと眺め続けるなんて 出来やしない>の平坦な歌い方に「なにこれw」と興奮したんですよね。それに近いような「なにこれ感w」が無かったのが寂しかった」

司会者「楽曲に特徴的なものがあるわけではなく、ただ単純にいい曲」

潮見「欅坂の楽曲には、毎回小さな革命を起こしてほしいんです。勝手な希望ですけどね」

 

 

『二人セゾン』秋に踊る女の子たち

司会者「そして11月17日、MVがYoutubeで公開されました」

潮見「MVめちゃくちゃ良くて、楽曲もすごく気にいってしまった」

司会者「(笑)」

潮見「微妙とか言っちゃったの撤回しますね」

 

司会者「秋の装いで通学する女の子たちのMVですね」

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潮見「まず僕はセーターとかマフラーとかしてる女の子が大好きなんです」

司会者「Twitterでそういう変態っぽいこと言ってましたねそういえば」

潮見「通学してる女子高生が愉しそうに踊りながら闊歩してるっていうだけで最高なんですよほんとに。ダンスが上手いかどうか、振りが揃っているかどうかも大事かもしれませんが、それよりも愉しそうかどうかのほうが重要だと僕は思ってます」

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司会者「潮見さん、今回は平手さんだけではなくて他のメンバーもちゃんと見てるんですね」

潮見「そうですね、見えるようになってきました。What made you do that?の女の子の表情すごくいいですね」

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司会者「他のメンバーが見えるようになってきたのは、潮見さんの目に変化があったのでしょうか」

潮見「それもあると思いますが、作り手にもそういった意識があると思います。平手ちゃん以外のメンバーが写っているシーンも多くなった気がしますしね。例えば、『サイレントマジョリティー』が平手友梨奈一人が闊歩しているのに対して、今回はみんなで前進して向かってくる映像が特に象徴的だと感じました」

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司会者「ここ迫力ありますよね」

潮見「よく見ると全員、歩く歩幅も出す手足も揃えられているんですよね。集団行動的な美しさを整えた上で、それぞれが思い思いの綺麗な歩き方をしてる」

司会者「でもよく見ると平手さんだけ逆足が前に出てません?」

潮見「ほんとだ……」

 

 

平手友梨奈がいる季節

司会者「『二人セゾン』の歌詞はどうでしょう」

潮見「結局のところ、言ってることは『世界には愛しかない』と一緒だと思うんです」

司会者「と言いますと……?」

潮見「前回の記事で『世界には愛しかない』を<どうしようもなく一度きりの季節の中で、届かないと分かっていても尚、平手友梨奈は空に手を伸ばす>と評しました」

 

潮見「今しかないということに最上級の価値があると位置づけて、平手ちゃんをはじめとする欅坂のアイドルたちはそれを体現する。どうしようもなく一度きりの季節の中で、届かないと分かっていても尚、空に手を伸ばす」

司会者「それが平手友梨奈の描く夏ですね。今回の総括は、どうしようもなく一度きりの季節の中で、届かないと分かっていても尚、平手友梨奈は空に手を伸ばす」

【欅坂46】世界には愛しかないって、平手友梨奈がそう言うのなら。- 無印都市の子ども

 

司会者「『二人セゾン』を評した文章だと言われても違和感ないですね」

二人セゾン 二人セゾン

春夏で恋をして

二人セゾン 二人セゾン

秋冬で去ってゆく

儚く切ない月日よ

忘れないで

 

潮見「今回は「手を伸ばす」ではなくて「手を離す」ですけどね。別に偶然近い言葉を選んでいたってわけではなくて、ただ秋元康欅坂46に対して魅力に思っているものが変わっていないというだけなんです」

司会者「同じものを角度を変えて、モチーフを変えて歌っているだけ」

潮見「そういうことですね。美しい女の子がいた季節、みたいな」

司会者「永遠になれなんて望まないしむしろ永遠じゃないから良い、みたいな」

 

 

軍服問題と神の一手

司会者「最後に少しだけこの話題に触れておきたいのですが、欅坂46がライブで着た黒い衣装がナチスドイツの制服に酷似しているとTwitter上で批判を受け、海外メディアも報じる事態になりましたね」

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潮見「まぁ、ナチスですよねこれ」

司会者「あっさりと……」

潮見「僕はそれを批判したいとか援護したいとかじゃなくて、むしろこの騒動をうまく利用してほしいんですよね」

司会者「利用ですか。そういえば、イスラエル大使館がTwitterで、欅坂46を特別セミナーに招待すると言ってましたね」

潮見「これは欅坂46の影響力を利用するよってことですよね。いい手だと思います。欅坂サイドとしても、これは絶対実行するべきだと思うんですよ。次のシングル曲はそれをモチーフにして、『サイレントマジョリティー』の続きになるような歌詞を書けばいい」

司会者「今回の騒動をきっかけに、同調圧力ファシズムを歌う」

潮見「騒動を経て書かれた楽曲と『サイレントマジョリティー』を軸にして1stアルバムが出来たら、たぶん名盤になると思うんですけどね」

司会者「秋元康はどうするんでしょう」

潮見「どうなんでしょう、指原騒動のときのHKT左遷は神の一手でしたよね。本来マイナスな要素を持った出来事を上手に利用してプラスな状況へ持って行った。秋元康はもうAKBにあまり興味がなさそうだし、欅坂46でああいう神の一手が見たいですね」

司会者「『二人セゾン』は騒動前から準備していた楽曲でしょうから、次ですね」

潮見「もし軍服的なモチーフが消えたら、かなしいですね。それはないと思いますけど」

司会者「次も楽しみにしています。どうもありがとうございました」

潮見「ありがとうございました」

<了>

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「あひる」という小説が非常にいい。

 

読書芸人とあひる

アメトーーク』で紹介された今村夏子著『あひる』が、単行本として発売になった。

あひる

あひる

 

ようやく発売になりました。いままでは、福岡の文芸誌「たべるのがおそい」に掲載されたのみだったので、入手するのがちょっと難しかったのだ。

 

 Amazonの書影はちょっと地味に見えるかもしれないけど、実物には宣伝文の入った帯が巻かれており、背表紙が緋色で、とても品の良い装丁になっている。

Amazon映え”しない表紙はもったいないなーと思うけど、実物はほんとに素敵。

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アメトーーク』で紹介された本の中で、今現在特によく売れているのは『コンビニ人間』と『マチネの終わりに』の二作だというのが、全国の書店員の総意だろう。

コンビニ人間

コンビニ人間

 
マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

 

例えば又吉直樹の『火花』がそうであるように、小説がよく売れるときというのは、普段小説を読まない人の手にも届いたときなわけだ。比較的読みやすい文章で書かれたこの二作が売れていること(普段小説読まない層にも届いていること)は、とても良い傾向だと思っている。

そんな中で昨日今日あたりから本屋に並び始めた『あひる』。

番組で紹介された本の中では唯一、単行本として未発売のものだった。僕自身は読書芸人ブームにあまりのれないのだけど、この小説がそのブームに巻き込まれて売れていってくれたら嬉しく思う。

 

今年上半期の芥川賞候補作に選ばれた『あひる』は、いわゆる「純文学」というジャンルに属することになる。普段小説を読まない人の中には「芥川賞」や「純文学」という言葉に苦手意識を持っている人は少なくないだろう。

『あひる』はそんなザ・純文学、ザ・芥川賞候補)な作品なわけだけど、芥川賞ひいては純文学というものが、どういう種類の面白さなのか?を普段小説を読まない人にも理解してもらいやすい作品になっていると僕は思う。

だからこそ「普段手に取らんけどなんか面白そうなの読んでみようかねー」という方々にアプローチできる機会に、しっかり読まれてほしいのだ。

 

 

事前情報をあまり仕入れずに読んだほうが面白いと思うので、ここで詳しく内容を説明することはしない。あひるが主人公宅にやってくる、それだけだ。

あひるを飼い始めてから子供がうちによく遊びにくるようになった。あひるの名前はのりたまといって、前に飼っていた人が付けたので、名前の由来をわたしは知らない。

『あひる』(書肆侃侃房) - P.6

 50ページほどの短めな小説で、文章がとても読みやすい。『コンビニ人間』も読みやすいけど、それよりも更にさらさらと読める。漢字さえ知っていれば小学生でも問題なく読めるだろう。

文章が読みやすい上に何かどうおもしろいのか比較的分かりやすい、けれど安っぽくはないし小説としての完成度が高い。オードリー若林くんは「おぎやはぎ」の漫才に喩えたけど、僕は「かもめんたる」のコントに近い気持ち悪さだと思う。

 

僕にとっては2016年No,1小説だし、もしかしたらここ数年の中でもいちばんかもしれない。「僕の好きな純文学っていうのはこういうのだよ」と伝えるための名刺代わりとして、これからは『あひる』の名前を出していこう――なんて考えるくらいにはベタ惚れしている。こんなにも人に薦めやすい小説に出会ったのは初めてかもしれない。

 

昨夜、「久しぶりにいい小説読んだなー」とホクホクしながら夜道を歩いているときに、そうだよなぁもっと自由でいいんだよなぁ小説なんてと思って、うれしくなって、ほんとにこんな顔してた。

 

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美しい表現である必要はない。正しい文法である必要はない。伏線が回収される必要はない。謎が解決される必要はない。矛盾が残っても全然構わない。

ほんとのところ、そんなことどうだっていいのだ。おもしろい物語になってさえいれば。

<了>

あひる

あひる

 

ちなみに読書芸人のなかで僕がいちばん信頼しているのは光浦さんです。