3.11後の想像力
2011年3月28日。
あの震災の直後、宮崎駿が『コクリコ坂から』製作についての会見を行ったことを憶えていますでしょうか。その会見の中で宮崎駿は“3.11後の創作表現”について発言しました。
ネットニュースの見出しにもなったので、憶えてる方も多いかと思います。
今はファンタジーを作る時期ではない。(ファンタジーが)あまりに多く作られ過ぎて、ゲーム化している。だから我々がゲームを作ることはなかろうと。今こそ等身大の人間を描かなければ。
当時の僕はこの発言が妙に気になって、それ以降日本の創作表現がファンタジーからリアリズムへと流行していくのかを気にしながら映画や音楽、文学を鑑賞してきました。
そして震災から4年が経って、宮崎駿が震災直後2週間程で示した指針/予言と、今現在の創作表現を照らし合わせてみると、やっぱり宮崎駿の示したほうと真逆の方向へ日本の想像力は舵を切っているんじゃないの?と思うのです。
震災後ファンタジーは通用しないどことか、むしろファンタジー全盛期ともいうような時代へ入ってきていると僕は感じます。
※正直に言ってしまうと、それはまだ僕の体感でしかないので、まだまだ説得力あるようなことを書く力はありません。ですがそれでも今のうちに書いておきたいと思ったのには理由があります。それは後ほど。
魔法使いだらけの世界
改めて思い返すとここ数年の主要な作品の中に「魔法」を使うようなファンタジー的世界観のものが多く存在することが分かります。
映画 - アナと雪の女王
去年一番ヒットした映画は、『アナと雪の女王』(ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオズ)。日本歴代興行収入第3位。
雪と氷の魔力を持つ女王エルサ、そのエルサと王国を救うため冒険の旅に出る妹アナ、この2人の姉妹を軸に、真実の愛が描かれる。(アナと雪の女王 - Wikipedia)
”触れたものを凍らせたり雪や氷を作る魔法の力を持って生まれたアレンデール王国の王女・エルサ”についてはこのブログでも語りました。
邦楽 - SEKAI NO OWARI
音楽ではどうでしょう。AKBGとお馴染みジャニーズ、EXILE系が圧倒的な力を見せるシーンの中で、ここ2、3年で対抗勢力と言えるくらい力をつけたバンドは彼らだけですよね。
「ファンタジー」という言葉そのものが歌詞やタイトルになっている楽曲をいくつも持っていて、その歌詞の寓話性でファンを増やしてきたアーティストだと思います。
文学 - 鹿の王
時代を反映するものとして「文学」はあまりにも濁った鏡ではありますが、本年度の本屋大賞が、初のファンタジー作品『鹿の王』だったことも「無関係です」とは僕には言いきれません。本屋大賞受賞作の多くは映像化されているので、ファンタジー作品が映像化されてどう受け入れられるかがポイントかもしれません。
私たち - Halloween
もっと言うとハロウィーンに多くの若者が仮装して街に繰り出しはじめたのも2011年以降の話で、以前はほとんど見かけなかったはず。
もちろんハロウィーンの仮装は商業的な理由から意図的に流行らせたという側面もありますが、何年も成功しなかったわけですよ。それがここ数年で一気であんな大きなイベントになってしまうのは、やっぱり時代の空気と仮装が妙にリンクしたんじゃないかと思うのです。
渋谷こんな感じ pic.twitter.com/x1a47kS9Qs
— ゆっkey@5/5 コスホリ D3 (@snowfairy8) 2014, 10月 31
ファンタジーの再開発
冒頭にも書きましたが、まだ僕の体感でしかないのでなかなか説得力のあるような文章は書けていませんが、「なんとなくその流れは俺も感じてたよ」と言ってくれる人がいる気がするのです。
アナ雪やセカオワを例に出して「宮崎駿の意志とは裏腹にファンタジーの方向へ進んでるよなぁ」とぼんやり考えていたわけですが、まだ熟していないこの考察を今ブログに書いておこうと思ったのは、自分の仮説を加速させる2つのニュースがあったからです。
細田守監督新作映画『バケモノの子』
1つ目は、細田守監督の新作『バケモノの子』が、異世界モノであること。
『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』の監督。
その細田が、異世界ものを描くのです。
ディズニーランド大規模開発構想
ディズニーランドが今後の大規模開発構想を公開。
オリエンタルランドが28日、東京ディズニーランドに2017年度以降に新設する大規模開発エリアについての進捗状況を発表した。「ファンタジーランドの再開発」をコンセプトに、複数のエリアで構成し、東京ディズニーリゾートでは初めてディズニー映画『美女と野獣』をテーマとするエリアや、『ふしぎの国のアリス』をテーマにしたエリアを新設。(http://www.47news.jp/topics/entertainment/oricon/culture/171252.html)
僕のブログでは今起きていることや既に起きたことを僕なりに整理して書くことが多いのですが、今回だけは「時代の風向き」について書きました。
言いたいことは一つです。
宮崎駿は時代を見誤り、これから長期的なファンタジー全盛期に入る。
今はファンタジーの再開発の只中だと考えて間違いないと思います。
<了>
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